Insight Article

自動化は、決まっていないものを、速く大量に作る

「LinkedInに投稿する記事を、自動生成したい」。この相談はよく来ます。技術的には難しくありません。設計もできるし、文章も作れます。それでも私は、たいてい一度止めます。何を作るかではなく、何のために作るのかが決まっていないからです。自動化は、決まっていないものを、速く大量に作る装置です。決まっていなければ、決まっていないものが大量にできるだけです。

更新日2026-08-05
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Executive Summary

この記事で伝えたいこと

  • 自動化は、決まっていないものを速く大量に作る装置だ。決まっていなければ、決まっていないものが大量にできる。
  • 予算が先にあって、目的が後から探される。この順序で始まったものは、たいてい続かない。
  • 世の中の自動化は「作る」と「集める」に偏っている。動くと見栄えがするからだ。
  • B2Bで効くのは「分類する」と「調べる」。顧客は困りごとを毎日書いて送ってきているのに、誰もそれを分類していない。
  • 最初に自動化すべきは、単純で、頻度が高く、間違えても被害が小さい業務。一番面倒な業務から手をつけると、たいてい失敗する。
01

「LinkedInの記事を自動生成したい」

この相談は、よく来ます。

技術的には難しくありません。設計はできます。文章も作れます。それでも私は、たいてい一度止めます。

話を聞いていくと、出てくるのはこういう理由だからです。国内の競合がやっている。東南アジアの現地企業もやっている。負けたくない。

そこで社内の話が通り、予算が決まり、プロジェクトが立ち上がる。ただ、LinkedInを使う理由そのものが、はっきりしていません。

「新規の取引先を増やしたい」。それは分かります。では、どんな相手と、どんな取引をしたいのか。日本でどんな顧客を獲得したいのか。ここを聞くと、答えが出てきません。

そして、もう一つ事情があります。部署単位で予算を取った以上、何らかの成果を示さなければならない。新しいコンテンツを作るのは難しい。ウェビナーもいずれやりたいが、今は準備ができていない。だから、まずアカウントを作って、記事をある程度出していく。

気持ちは分かります。私も同じ立場なら、そうしたと思います。

ただ、ここには順序の問題があります。予算が先にあって、目的が後から探されている。この順序で始まったものは、私が見てきた限り、たいてい続きません。

02

決まっていないのは、AIの使い方ではない

ここで多くの人が誤解します。「AIの使い方が分からないから、うまくいかない」と。

違います。決まっていないのは、AIの使い方ではありません。何のために発信するのかです。

自動化というのは、決まっている工程を、速く大量に回す装置です。決まっていない工程を自動化すると、決まっていないものが大量にできます。

しかも厄介なのは、作れてしまうことです。作れなければ、そこで立ち止まって考えます。ところが今は、テーマが曖昧でも、読み手が誰か決まっていなくても、記事は生成できてしまう。立ち止まる機会が消えました。

テーマが決まっていない状態で記事を100本生成すれば、テーマの無い記事が100本できます。誰に向けて書くのかが決まっていなければ、誰にも刺さらない記事が100本できます。そして、その100本は、あなたの会社の名前で公開されます。

B2Bにおいて、これは中立ではありません。マイナスです。買い手は「この会社は分かっているか」を見ています。中身の無い記事が100本並んでいることは、その問いに対する明確な回答になってしまいます。

自動化は、決まっていないものを、速く大量に作る。決まっていなければ、決まっていないものが大量にできるだけだ。

03

3ヶ月、伸びない。そこで折れる

仮に、記事を出し始めたとします。

最初の3ヶ月程度は、思ったほどアクセスが伸びません。これは正常です。認知が積み上がるまでには時間がかかる。数ヶ月から年単位の計画を立てて、実行し続けないと結果は出ません。

しかし、部署の予算で動いているプロジェクトは、3ヶ月で成果を問われます。そこで折れる。あるいは、方针が変わる。

だから、始める前に決めておくべきことがあります。何のためにやるのか。

「認知度を上げるため」というのは、目的として粗すぎます。具体的に、顧客に何をさせたいのか。

問い合わせをしてほしいのか。ホワイトペーパーをダウンロードしてほしいのか。メルマガに登録してほしいのか。それとも、ホームページへのアクセスを増やしたいだけなのか。

これによって、書くべき記事も、置くべき導線も、測るべき数字も、全部変わります。そして、これが決まっていなければ〃3ヶ月後に「うまくいっているか」を判断することすらできません。

広告も同じです。出せばいいというものではない。採算が合い、投資に見合う形で出す必要があります。そのためには、何を成果とするかが先に決まっていなければならない。

04

世の中の自動化は「作る」と「集める」に偏っている

n8nやMakeで、世の中の会社が何を自動化しているかを見ると、はっきりした偏りがあります。

ブログ記事の自動生成。SNS投稿の自動生成。LinkedIn投稿の自動作成。コールドメールの自動パーソナライズ。リード情報の自動収集。

要するに「作る」と「集める」です。

理由は分かります。動くと見栃えがするからです。人に見せられる。社内で報告できる。予算を取った説明がつく。

一方で、B2Bにおいて、この2つはどちらも効きにくい。

記事とSNSの大量生成が効くのは、BtoCのEC事業者です。理由は明確で、量を出す材料があるからです。新商品が出る。季節が変わる。同じ商品でも、見せ方を変えれば別の投稿になる。商品点数が多く、検索の入口が無数にあり、量がそのまま接点になる。この場合は有効です。

B2Bには、その材料がありません。新商品も、季節の切り替わりもない。無理に量を出そうとすると、同じことを言葉を変えて繰り返すことになります。そしてB2Bの買い手は、量では動きません。彼らが見ているのは「この会社は自分の課題を分かっているか」です。量産された記事は、その問いに対して逆の証明になります。

そして「集める」ほうも同じです。リード情報を自動で大量に集めても、そのリードに何を送るかが決まっていなければ、記事14で書いたとおり、使えないデータが溜まるだけです。

世の中がやっている自動化/B2Bで効く自動化
多くの会社が最初に手をつける
  • ブログ記事の大量自動生成
  • SNS・LinkedIn投稿の自動作成
  • コールドメールの自動パーソナライズ
  • リード情報の自動収集・スクレイピング
  • デザインの自動生成
  • ※動くと見栃えがする。だから最初に手がつく
B2Bで実際に効く
  • 問い合わせ・チャットログの分類とFAQ化
  • 問い合わせからの改善ネタ・新サービスネタの抽出
  • 競合リサーチ・業界リサーチの定型化
  • 予算実績・数値シミュレーションの自動更新
  • ※地味。見栃えがしない。だから誰もやらない
05

顧客は、困りごとを毎日書いて送ってきている

私が最も価値が高いと考えている自動化を、ひとつ挙げます。

問い合わせとチャットボットの応答ログを、分類することです。

コンタクトフォームやヘルプデスクには、毎日、顧客の言葉が届いています。何を知りたいのか。何に困っているのか。どこでつまずいているのか。顧客が、自分の困りごとを、自分の言葉で書いて送ってきている。

これ以上の一次情報が、どこにあるでしょうか。

ところが多くの会社は、これを返信して、閖じています。分類していない。集計していない。次の意思決定に使っていない。

やるべきことは、そう複雑ではありません。

問い合わせのログを、時系列で分類する。どういう時期に、どういう情報が求められているかを見る。そこからFAQを作る。同じ質問が繰り返されているなら、それはサイトの説明が足りていないということです。

そして、もう一段。その問い合わせを、「サービスの改善につながるもの」「売上向上のヒントになるもの」「新規サービスのネタになるもの」に挙り分ける。

これは、AIが得意な仕事です。大量のテキストを読み、分類し、傾向を出す。人がやると膞大な時間がかかるが、一件ごとの精度は必要ない。間違って分類されても、被害は小さい。

自動化の条件を、完璧に満たしています。

同じことが、経営企画の定型リサーチにも言えます。競合リサーチ、業界リサーチ、予算実績の突き合わせ、数値シミュレーション。頻度が高く、手順が決まっていて、間違えても致命傷にならない。そして経営企画は、たいてい人が足りていません。

JAPAN CONSULTING VIEW
発信のネタは、すでに社内にある

Japan Consultingは、問い合わせ・チャットログの分類と、そこからのFAQ・改善ネタの抽出を支援しています。何を発信すべきか分からないという相談を受けたとき、私たちが最初に見るのは競合ではなく、その会社に届いている問い合わせです。顧客が何に困っているかは、顧客自身がすでに書いて送ってきています。

佐藤 亘(Wataru Sato)
06

最初に自動化すべきは、地味な業務だ

多くの会社は、一番面倒な業務から自動化しようとします。そして、それが最も失敗します。

理由は単純です。面倒な業務は、たいてい例外処理が多い。例外が多い業務を自動化すると、例外に対応するための人手が、かえって増えます。自動化したのに、監視と手直しという新しい仕事が生まれる。

自動化すべきなのは、単純で、頻度が高く、間違えても被害が小さい業務です。

地味です。派手さがない。社内で報告しても「それだけですか」と言われる。だから誰もやりたがらない。しかし、そこからしか始まりません。

最初に自動化すべき5業務(B2B)
  • 問い合わせ・チャットログの分類(何が繰り返し聴かれているかを、月次で出す)
  • 分類したログからのFAQ生成(同じ質問が3回来たら、サイトに書く)
  • 問い合わせからの改善ネタ・新サービスネタの抽出と挙り分け
  • 競合・業界リサーチの定型化(毎月同じ項目を、同じ形式で集める)
  • 予算実績・数値シミュレーションの自動更新(経営会議の資料を、手作業で作らない)
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自動化した業務は、止まっても静かだ

最後に、自動化を進めるうえで、必ず設計しておくべきことを書きます。

自動化した業務は、止まっても静かです。

人がやっている業務なら、止まれば誰かが気づきます。担当者が休めば、仕事が溜まる。誰かが困る。しかし自動化した業務は、エラーも出さずに、何もしなくなることがあります。そして「動いているはず」という前提だけが残ります。

当社でも、これで失敗しました。自社サイトで、ある処理が1ヶ月以上にわたって完全に停止していたのに、誰も気づきませんでした。記録には「確認済み」と残っていました。エラーは一件も出ていません。静かに、何もしていなかっただけです。

自動化とは、作業を減らすことではありません。作業を減らす代わりに、「動いているかを見る」という新しい仕事を引き受けることです。

だから、自動化するときは必ずセットで決めてください。誰が、どのくらいの頻度で、何を見て、動いていることを確認するのか。

そして、その確認は「報告を読むこと」ではありません。実際に出力を見ることです。

08

どういう発信者になるのかを、先に決める

冠頭の相談に戻ります。

発信者になることは決まっている。しかし、どういう発信者になるのかが決まっていない。

どういう世界観を持って、顧客に対して何をしたいのか。ここが決まっていないまま、最初からいろいろなことをやろうとすると、うまくいきません。そして自動化は、その「決まっていない状態」を高速化するだけです。

もう一つ、繰り返しておきたいことがあります。予算が先にあって、目的が後から探される。この順序で始まったものは、続きません。予算を取ったから何かしなければならない。だから、作れるものを作る。自動化は、その「何かしなければならない」に、完璧に応えてしまいます。

だから順序はこうなります。

何のために発信するのかを決める。顧客に何をさせたいのかを決める。誰に向けて書くのかを決める。そこまで決まって初めて、どの工程を自動化してよいかが分かります。

決まっている工程は、自動化してよい。決まっていない工程を自動化してはいけない。

これだけです。

JAPAN CONSULTING VIEW
決まっている工程だけを、自動化する

Japan Consultingは、AI内製化の支援において、まず「何が決まっていて、何が決まっていないか」を切り分けます。決まっている工程は自動化してよい。決まっていない工程を自動化すると、判断の不在が量産されます。ツールの設定は、その後です。

佐藤 亘(Wataru Sato)
FAQ

この記事に関するFAQ

BtoCのEC事業者であれば有効です。新商品や季節の切り替わりがあり、同じ商品でも見せ方を変えれば別の投稿になる。量を出す材料があるからです。B2Bには、その材料がありません。無理に量を出そうとすると、同じことを言葉を変えて繰り返すことになります。そして買い手が見ているのは「この会社は自分の課題を分かっているか」であり、量産された記事はその問いに対して逆の証明になります。
競合がやっているからやる、という理由で始めた発信は、3ヶ月で止まります。成果が出るまでに時間がかかる一方、続ける理由が「競合がやっているから」しかないからです。先に「どんな相手と、どんな取引をしたいのか」を決めてください。新規取引先を増やしたい、では粗すぎます。
であれば、3ヶ月で測れる指標を先に決めてください。アクセス数ではなく、たとえば「問い合わせの内容が変わったか」「商談での説明時間が短くなったか」といった指標なら、早期に変化が見えます。アクセス数を成果指標に置くと、確実に3ヶ月で折れます。
面倒な業務は、たいてい例外処理が多い業務です。自動化すると、例外に対応するための監視と手直しが増えます。単純で、頻度が高く、間違えても被害が小さい業務から始めてください。地味ですが、確実に効きます。
誰が、どのくらいの頻度で、何を見て、動いていることを確認するのか。これをセットで決めてください。自動化した業務は、止まっても静かです。エラーも出さずに、何もしなくなることがあります。確認は「報告を読むこと」ではなく、実際に出力を見ることです。
Sources / References

本記事は、筆者が中堅B2B企業に対して行ってきたAI活用・業務自動化の支援、および自社での n8n・Make・生成AI の運用実務をもとに構成しています。自社サイトで発生した自動化停止の事例は、2026年7月に確認したものです。特定企業の事例は抽象化しています。解釈・考察は筆者による。

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Executive Summary
この記事で伝えたいこと
  • 自動化は、決まっていないものを速く大量に作る装置だ。決まっていなければ、決まっていないものが大量にできる。
  • 予算が先にあって、目的が後から探される。この順序で始まったものは、たいてい続かない。
  • 世の中の自動化は「作る」と「集める」に偏っている。動くと見栄えがするからだ。
  • B2Bで効くのは「分類する」と「調べる」。顧客は困りごとを毎日書いて送ってきているのに、誰もそれを分類していない。
  • 最初に自動化すべきは、単純で、頻度が高く、間違えても被害が小さい業務。一番面倒な業務から手をつけると、たいてい失敗する。
AUTHOR / PERSPECTIVE
Japan Consultingの視点

参考文献リンク、注記